「呼吸をするようにビーズのことを考える」好きを追求するヒトツブビーズ店 / 三好 なおみ

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全国的にも珍しい、アクリル系ビーズ・大粒ビーズをメインに取り扱う「ヒトツブビーズ店」。香川県出身の店主・三好 なおみさんが世界各地からセレクトした1,500種類以上のビーズが、壁一面に並べられています。

店内では素材の購入やオリジナルのアクセサリー作りができるほか、併設されたカフェで飲み物や食事を楽しみながら、ゆっくりと時間を過ごせます。「1日のうち16時間くらいはビーズのことを考えている」と語る三好さんに、琴平町で店舗を構えることになったきっかけから今後の展望まで、お話を伺いました。

ヒトツブビーズ店 店主・三好 なおみ
香川県 善通寺市出身、アクセサリー作家歴25年。小学生の頃にビーズに出会い、それからずっとビーズが大好き。学生時代よりハンドメイドアクセサリー販売を始め、2017年に「ヒトツブビーズ店」をオープン。

小学生の頃にビーズと出会い、アクセサリー作家として活動

ーー三好さんはいつからビーズが好きだったのですか?

小学生の頃からずっとビーズが好きでした。その頃からものづくり全般に興味があり、高校では木工・陶芸・版画などのデザイン全般、大学では染色・金工・パッケージの商品企画などを学びました。以来、アクセサリー作家として25年以上活動しています。

日常生活のなかで「どんな人がどういうシチュエーションで使うのか」をイメージしてアクセサリーを作るのが好きで、それがデザインにも繋がっています。アクセサリーは身を飾る道具だと思うので、デザイン以外に重さや付け心地も大事にしているポイントです。

 

ーー小学生の頃からものづくりが好きだったのですね。ちなみにお店を始めるまではどのような活動を行っていたのですか?

まず香川県の三木町に店舗を構えたのが今から5年ほど前で、それまでは京都にいたんです。作ったアクセサリーを雑貨屋さんに卸したり、展示会やデザインフェスタに出たりと、10年ほど制作活動をしていました。

いずれ地元香川に帰ることも考えていましたが、地方で活動を続けるためにはSNSやWebで発信していかないと、仕事が成り立たないと思っていました。私は大学生の頃から自分のHPを作ってアクセサリーを販売していたんですね。実際にHP経由で取引をしたこともあり、実店舗を持たなくても場所を問わず仕事ができると思い、Uターンしてきました。

 

イベントをきっかけにビーズの需要を感じ、お店をオープン

ーー店舗を持たなくてもいいと思っていたのに、なぜお店を始めることになったのですか?

地元に帰ってから、地方にはビーズ屋さんや専門店が少ないことに気が付きました。アクセサリーをイベントで販売していても「ビーズだけ分けてもらえませんか?」と言われることが多くて。みんなビーズを欲しがっているなと(笑)。ビーズの需要はあるし、お店を開いてもお客さまが来てくださると思いました。

そこから旦那さんが三木町の物件を見つけてくれて、ドライブがてら下見に行ったんですよ。外観は古いものの、「たくさんのビーズが詰まった瓶で壁一面を埋め尽くしたらかわいくなる」と頭のなかで鮮明にイメージが湧いてきて、すぐに契約しました。

 

ーーそれは即決したくなりますね。オープンしてからの反響はいかがでしたか?

SNSを中心に集客を行い、たくさんのお客さまが来てくださいました。もともとは希少価値が高いヴィンテージビーズをメインで扱おうと思っていたのですが、お店が通学路だったので小学生も興味を持ってくれて。それがきっかけでお手頃価格のビーズも扱うようになり、子どもと一緒に来れるお店にしようと思うようになりました。

ですが6畳ほどの小さなお店だったので、家族連れでの来店が難しかったんですね。旦那さんが料理人だったこともあり、カフェを併設した広い場所に移りたいと思うようになって。香川県内全域でキッチン・駐車場付き、バリアフリーがある物件を探していたら今の店舗と出会い、2019年7月にオープンすることになりました。

 

「あの人はビーズが大好きな人だったよ」と言われて死にたい

ーーお店を経営する上で三好さんが大切にしていることがあれば教えてください。

ビーズの魅力はいろんなデザインがあって、オリジナルのアクセサリーを作れるところや誰でも楽しめるところです。お店には小さな子どもからおばあちゃんまで3世代で来てくれるお客さまもいます。ビーズをコレクションしている人、アクセサリーを作りたい人、子どもや奥さんが喜んでいるのを見るのが好きなお父さんなど、さまざまなお客さまが来るので、家族や友人、お連れ様と一緒に来店しやすい空間作りは意識していますね。

 

ーーワークショップもされていると思いますが、ビーズをきっかけに繋がる機会もありますか?

お客さま同士が仲良くなってSNSで繋がることはありますね。去年は余っている布・ビーズ・金具などの資材を持ってきて、同じ重さを測って持って帰れる「資材交換会」を行ったんです。初対面の人同士でしたが「ものづくりが好き」「ビーズが好き」という共通点があるので盛り上がりましたね。

ーー共通のテーマをきっかけに繋がれるのは素敵ですね。ビーズが好きで楽しいからやっている部分もあると思いますが、三好さんを動かす原動力は何かありますか?

私は呼吸をするようにビーズのことを考えているので、自然と身体が動いている感覚です(笑)。ビーズは学問でいうと民俗学で、12万年の歴史があるんですよ。なので勉強したいことが多すぎて飽きません。

 

ーー「呼吸をするようにビーズのことを考える」。そこまで突き抜けている人はあまりいないのでとても魅力的だなと思います。

死ぬときに「あの人はビーズが大好きな人だったよ」って言われるのが目標です(笑)。私は好きなことをして生きていきたいと高校生の頃から思っていて。地域で好きなことをしながら生きていくにはブランディングも大切ですし、戦略を立てて戦わないといけない。

好きなことをやり続けてファンが付く人はカリスマだと思いますが、私は凡人なので、たくさん本を読んで勉強しています。ほかにも展示会やイベントに足を運んで業界の新しい情報や知識を手に入れたり、ご来店くださった方がどういった経緯でお店を知ってくださったのか把握したり。何に興味をお持ちかなどをお話しながらリサーチして、それをSNSでの発信や商品の仕入れに反映しています。

 

琴平町を拠点に人と人が繋がる仕掛けを作る

ーー好きなことをするために学び続ける三好さんの姿勢やビーズ愛が、お客さまにも伝わっているのだと感じました。今後の展望があればお聞かせください。

今後はお客さま同士が繋がれる機会を作っていきたいです。たとえば、大人の部活動のように時間や曜日を決めて集まって作品を見せ合ったり、お茶会をやってみたり。年齢・性別・地域が違っても共通の趣味でお客さまが繋がれる仕掛けを生み出していきたいです。あとはビーズを寄付してもらうこともあるので、集まったビーズをうまく活用できればなと。

琴平町は面白い町だと思っているので、ここを拠点に活動していきたいと思っています。「ヒトツブビーズ店」がきっかけで、ビーズは職人技の世界なんだと知ってもらって、ビーズを好きになってもらえたら嬉しいです。

私がビーズの世界でお仕事をしてきて一番残念なのは、ビーズの存在や魅力が多くの人に知られていないこと。ビーズ職人さんに少しでも長く素敵なビーズを作り続けていただけるように、地方の、業界の端っこから応援していければなと思っています。

 

ーー三好さんをきっかけにビーズファンは増えると思います。ちなみに琴平町のなかで注目しているスポットはありますか?

新町商店街周辺ですね。地元の人が多く訪れる商店街で、観光地からも近くて新しいお店もオープンしています。これから面白くなるのではないかと注目しているエリアです。

 

ーー琴平町は移住者も増えてきているそうですが、移住者や地元の方とも繋がりはありますか?

お店をオープンしてしばらくするとコロナが来てしまったんですが、時間ができて琴平町を散策するようになってからは、移住者や地元の人と少しずつ繋がるきっかけができました。以前は営業日が被って町の人と会えなかったので、コロナがいい変化をもたらしてくれたと思いたいですね。

もともと「万人受けはしないけど好きな人はすごく好き」な品揃えのお店なので、SNS経由で知って来てくださる県外からのお客さまが多かったんです。コロナで県外の方が来られなくなって、アピールの仕方も変えていこうと思うようになりました。

実際に初めてお店に来た方やビーズにあまり興味がなかった方に「ビーズの見る目が変わった」「ビーズに興味を持った」と言ってもらえると嬉しいですね。

ーー三好さんのビーズ愛が伝わって、ビーズの世界に引き込まれるのかもしれないですね。

常連の方と新規の方で差別化をしたくなくて。常連の方には「用があったら呼んでね」と言ってその場を離れ、初めて来てくれた方に積極的に声を掛けにいきます(笑)。


「ヒトツブビーズ店」ではオリジナルアクセサリー作りが体験できます


終始笑顔で楽しそうにビーズの魅力を語ってくれた三好さん。好きなことに真摯に向き合う姿勢が、多くの人を惹きつけるのではないかと感じました。ビーズに興味がある人もない人も、三好さんが素敵な笑顔でビーズの世界へと案内してくれるので、来店すればビーズ沼にハマっているかもしれませんよ。

「ヒトツブビーズ店」では好きなビーズを購入してゴムブレスを作る体験ができるほか、ビーズを選んでオリジナルアクセサリーをオーダーできる「お作りサービス」もあるので、自分で作る自信がなくても大丈夫!カフェでひと息つきながらおいしい食事や飲み物も楽しめます。ピアス・イヤリング・ブレスレットなど、あなたの気分で心惹かれるビーズを組み合わせて、世界にひとつだけのオリジナルアクセサリーを作ってみませんか?

■詳細は下記からご覧いただけます。
https://www.hitotububeads.com/otukuri

取材・文:木村 紗奈江
撮影:近兼 涼佳

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【ヒトツブビーズ店 本店 基本情報】
住所:香川県仲多度郡琴平町上櫛梨1132-5
TEL:0877-89-4301
営業時間:日〜水曜日 11:00~17:00
定休日:木〜土曜日
※臨時営業・臨時休業の場合あり(スケジュールページはこちら
駐車場:10台程度(無料)
公式サイトURL:https://www.hitotububeads.com/
公式Instagram:ヒトツブビーズ店本店(@hitotububeads)
公式Twiter:ヒトツブビーズ店(@hitotububeads)
公式YouTube:ヒトツブビーズ店チャンネル